酒井桂史 「将棋王玉篇」 第51番 1938
大駒を使用していない小駒図式。
易しく楽しい作品なので是非挑戦してみることをお薦めする。
初手、桂馬をどっちに成るか悩むが、そこは悩まないで大丈夫(後述)。
41桂成、同玉、43香、51玉、42香成、
まずは攻方の勢力圏である三段目におびき寄せたい。
なので、玉は成香を取らずに逃げることになる。
61玉、52成香、71玉、62成香、81玉、72銀、91玉、81金、同金、同銀成、同玉、72成香、
端で駒交換を済ませて72成香(図では杏と省略する)
これは取らざるを得ない。
同玉、83歩成、61玉、72と、
なにやら今度は右に追うことになるらしい。
51玉、62と、41玉、52と、31玉、42と、21玉、32銀、11玉、21金、同金、同銀成、同玉、32と、
右でも左と同じような駒交換を経て32と。
これは取らざるを得ない。
同玉、23歩成、41玉、32と、
もう片道あるようだ。
51玉、42と、61玉、52と、71玉、62と、
最後の逃避行は71まで、持駒が金2枚なので、もう逃げられない。
同玉、63金、51玉、52金打 まで49手詰
取っても逃げても同手数だが、ここは51の玉座に逃げて詰上げるのが解答者のマナーだろうか。
玉がひたすら逃げまくる楽しい作品だが、一つ問題点がある。
それは初手61桂成でも同じように詰むということ。
配置位置は対称形だが配置は対称ではないので、これは余詰だ。
いや余詰が問題なのではなく(十分問題だが)、解答者がこれはどちらかが詰みどちらかが不詰のはずだから…と無駄な労力を費やすことが問題だ。
それは作者の本意ではないはず。
そこで筆者の案は下図。
これならはじめから
「左右対称だ。それなら初手はどっちでもいいんだね。」
と悩まずに済むと思うのだがどうだろうか。
本図は石沢孝治編「酒井桂史作品集」(1974)目録#1586 から録った。
熱心家は酒井桂史「琇玉篇」、山村兎月編「将棋王玉篇」や清水孝晏編「酒井桂史作品集」を探してみると良いだろう。
酒井桂史の主な活躍の場は「将棋月報」であったようだ。
月報については利波偉さんの将棋雑記や、金子義隆さんの借り猫かもが勉強になる。(消えた?)
この連載は門脇芳雄「詰むや詰まざるや(正・続)」と福田稔「名作詰将棋」を基に書いてきたが、ここからしばらくは湯村光造「『将棋月報』で辿る戦前の詰棋界」(詰棋めいと第23号~第30号)がネタ本となる。
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「詰将棋入門(20) 酒井桂史の小駒趣向作」への1件のフィードバック