詰将棋入門(49) 最遠打で打歩詰回避

栗原寿郎 詰パラ 1952.2

小林淳之助「ブルータスお前もか!」で有名な作品だ。
98角・99香の仕掛けが大きなヒントになっている。(頁のタイトルもね)

詰将棋の鑑賞をするには、急いで正解を並べるのではなく、作者の設定した紛れ順に入っておくことも重要だ。
そこでまずは素直に攻めてみる。

71飛、92玉、54角、96歩、同香、同桂、

打歩詰の局面だがまだまだ手は続く。

81飛成、同玉、71歩成、同玉、74龍、

質駒を獲って、これは決まったかと思える局面だが……

61玉、71龍、52玉で逃れ。

持駒銀歩では逃走をとめられない。
54角が馬だったら良いのだが……。

【失敗図】

そこで正解は初手に戻って

11飛、

遠打には攻方の理由があるはずだから中合で近づけるのは玉方の応手の候補に必ずなる。
本作では変化になるので、先に潰してしまおう。

2手目例えば21歩だと

21歩、同飛成、92玉、93桂成、同玉、91龍、92歩、94歩、同玉、76角まで11手詰

【変化図】

94にたたける駒が入れば両方手で詰む。75成桂は桂合を品切れにするための配置だと解る。

【再掲図】

そこで素直に92玉と逃げることになるが、当然ながら継続手が妙手だ。

92玉、21角成、

飛車の利きを塞ぐ21角(成)。
今度は96歩合だと93歩と打てて簡単なので角合となる。

96角、同香、同桂、

ここから大駒3枚を捌き捨てる爽快な収束になる。

81角、同玉、54馬、92玉、81飛成、同玉、71歩成、同玉、74龍、

この図を【失敗図】の一つ上の図と比べていただきたい。
持駒の歩が減った代わりに54の角が馬に変わっている。
つまり1歩消費して角を馬に変えた効果があったわけだ。

これなら71龍に52玉と逃げられない。

61玉、71龍、同玉、72銀 まで19手詰

さて、本作は小林淳之助の解説で有名だが、筆者はそれを紹介した「古今中編詰将棋名作選」で知った。

タイトルでは最遠打で打歩詰回避と書いたが、正確には最遠打と最遠移動を組み合わせて(打歩詰を利用して)角を馬にすり替えるのが狙いである。

つまり98角を直接54角成とはできない。そこで21で成る(成る時期が確定できないのが残念と言えば残念だが些末なこと)。これを王手で54に引っ張ることは72歩が邪魔していて不可能。そこで王手駒11飛が必要になる。結果一段目にバッテリーを構築する必要ができたわけだ。
まとめると「バッテリーの再構築による角と馬のすり替え」……よけい分かりにくいか。

この作者、他に作品をみたことないのでT-Baseで検索したら他に2作出てきた。
1作は余詰だったので、残り1作だから紹介しておく。同じ頃に栗原吉尹という方がおられるが同一人物かどうかはわからない。

栗原寿郎 詰パラ 1952.1

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