北川邦男『溪流』第67番 近将1967.11
今日並べるのは13手の短編。
27飛、36玉、36馬まで3手詰なんてことはあるわけがない。
27飛、26歩、同飛、15玉、
26歩の捨合で味良く始まる。もちろん他合は15玉に獲った駒を打って1手詰だ。
ここから好手が出る。
23飛不成、
23飛不成の意味は16歩の打歩詰を打開しようというもの。
14への23角の利きを塞いで消すと共に、23飛成では自分で14に利きを作ってしまうので慎重に不成としている。
これで16歩の打歩詰は打開できたので、もし37龍ならば……
37龍、16歩、14玉、21飛成、
【変化図】
以下は32龍に26桂まで11手詰だ。
そこで作意は
14玉、
今度は15歩が打歩詰というわけだ。
なんだか上下対称でまた同じ問題が登場したような印象を受ける。
ここからの4手が本局の主題である。
15馬、同玉、16歩、14玉、
対称に26飛成では失敗する。
37馬を16歩に替えておくのが妙手だ。
26飛成、32龍、15歩 まで13手詰
これで見事に15歩の打歩詰が回避されたという訳だ。
今度は突歩だから禁手ではない。
このような歩詰手筋を先打突歩詰という。
注意して欲しいのは手順の中で歩を打ち、最後のその歩を突いて詰みだったら先打突歩詰というわけではないということだ。
紛れ順に打歩の逃れが必要だ。
本作で言えば7手目に26飛成とする順である。
応手は当然32龍で次の図に至る。
【紛れ図】
ではこの手筋は伏線手段としてしか表現できないのか。
それも否である。具体例は考えていただこう。
本作が優れているのは馬捨てを表現している点にある。
ちょっと考えてみればわかるが、普通に考えるとこのテーマは「歩を1枚余分に消費する」という表現になってしまいがちだ。(自作にある(^^; いっこの積木(43))
それを26飛成としたときに馬の利きを塞いでしまうことを利用して馬捨てを実現している。
ところで、先程は変化で21桂をとってみせたが、考えてみると作意同様に26飛成でも割り切れている。
それでは21桂は何のためかというと余詰防ぎのためである。
【研究課題】
この図だとどんな余詰があるのか研究課題としておこう。
つまり余詰を消し作意を成立させるには21香でもよいのだ。
そこをあえて21桂にした作者の巧さを味わっておきたい。