長編詰将棋の世界(22) 飛と飛と金の舞

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

選題の言葉(2010.11)

 あの猛暑は一体何処へ。いつの間にか季節は秋。秋は収穫の季節である。夏休みに創った新しい趣向作、そろそろ推敲も終わってくるはずだ。かつて手がけたが未完成のまま放置してあった野心作も熟してきた頃。仕上げをして世に問うのもこの秋の夜長が最適だ。ああ、きっと今月末にはそんな作品が大量に投稿されてくるに違いない。
 高木作は27年も前の発想だという。じっくり熟成させた風雅な香りを是非味わってください。
 担当を引き受けることになり、すぐに添川さんに手紙を書いた。
「作品ください」
返事が来た。
「投稿します」
 かくして本年は添川作品を柱とした撰題となった。感謝しています。また来年分もよろしくお願いします。

高木秀夫「舞」 詰パラ2010.11

棋譜ファイル

55金、63玉、64金打、72玉、73金、同玉、
64金、83玉、A85龍、84飛、B95桂、92玉、
83銀、93玉、94銀成、92玉、83成銀、91玉、
82成銀、同飛、同龍、同玉、83飛、91玉、
93飛成、92歩、83桂生、81玉、73桂、72玉、
92龍、82飛、71桂成、同玉、61桂成、同玉、
52歩成、同飛、同龍、同玉、43金、61玉、91飛、72玉、
92飛成、82飛、73歩、61玉、52金、同飛、
同龍、同玉、53飛、41玉、51馬、32玉、
33飛成、21玉、31龍、同玉、22金まで61手詰

53玉は35馬で
・63玉は45馬、62玉、63金、61玉、53桂、51玉、43桂、42玉、33金、同玉、34龍以下
・52玉は43金、同玉、44金、32玉、34龍以下
同銀は同金で
・同玉は46馬、63玉、64銀、72玉、73銀生、71玉、63桂、61玉、52歩成、同玉、55龍、53歩合、44桂、61玉、51桂成以下
・72玉は73銀、61玉、52歩成、53合、44桂、41玉、33桂、42玉、53龍以下
82玉は73銀、92玉、95龍、93歩合、84桂、83玉、72銀生、82玉、73金、同玉、46馬で
・62玉は54桂、53玉、93龍、52玉、43龍、51玉、73馬まで
・64金合は同馬、同玉、63金、54玉、46桂まで
84銀合は95桂、72玉、83銀、61玉、52歩成以下
81玉は82成銀、同飛、73桂、92玉、82龍以下
A 84銀は同玉、51馬、93玉、95龍、94金合、84馬、82玉、73馬、81玉、91馬、72玉、73金、61玉、52歩成、同玉、55龍、53銀合以下逃れ。
B 73金は同玉、46馬、64歩合、同馬、同玉、76桂、54玉、46桂、63玉、64銀、62玉、52歩成、同玉以下逃れ

作者 26~27年前、相曽晴日の「舞」という曲を聞きながら発想したものが、ようやく完成しました。狙いは飛合3回と金の動きですが、地味な印象は否めませんね。序盤の変化は気に入っています。

☆攻めの主力は2筋にいるのに、左上の空間がやけに広い。44金と軽く攻めたくなるが63金と潜られてすぐ切れる。ここは変化の森に飛び込む覚悟を決めて、55金から64金打と馬のラインに引き入れるべく、正面から攻めるしかないようだ。

☆変化イは読み飛ばしても、変化ロは必修だ。73銀生や52歩成から55龍、さらに53龍と切っていく辺りは味わっておかないと。

☆その変化を読んでいれば当然の手ながら、7手目64金の滑り込みは好手。とられずの銀ならぬとられずの金の感触だ。

☆83玉に85龍とまわって、いよいよ主題が始まる。仕掛けらしい仕掛けのない空間で、同じ意味づけの飛合が3回。繋ぎも一旦93玉とかわしたり、桂馬を残す味、3回目につなげる43金も序盤の64金のエコーのようで秀逸だ。

☆3回目の飛合を同龍と取った52手目の局面は2回目の飛合の後の40手目の局面とさほど変わらない。先ほどは成立しなかった53飛が73歩が出現するだけで実現してしまう面白さよ。

池田俊哉 飛合に対して利き筋に駒を打って、同飛同龍とさばく筋。良く見るところではあるが、これを繰り返して趣向にしてしまうという発想が素晴らしい。類形にまとめにくく盤面を広く使うため、それだけ練り上げるのに時間が掛かったのでしょう、精練された雰囲気はそこから漂うものか。
凡骨生 飛合3回で大いに楽しませて頂きました。
須川卓二 タテ1回とヨコ2回の同様の趣向?手順が現れるとは驚いた。これは凄い。

☆好評でした。3回繰り返すことによって作品になった。

国兼秀旗 27年という歳月を聞かされると「金の捌きに感心した」など、軽々しいことは語れません。

☆作者もそれだけ長い間楽しんだということでしょう。

野口賢治 興味は馬の出番だが、なんと終いにきて1回限りの顔見せとは…千両役者は優雅なものです。

☆変化・紛れで51馬や46馬と活躍しているのでお許しを。47角も気になるが、74金を消す巧い配置もなさそうだし、金を銀に換えることもできないので致し方なし。

宮本慎一 玉が鬼ごっこのように逃げ舞う。攻方の龍と合駒の飛はもっと舞う。

☆相曽晴日の「舞」、YouTubeで検索して聴いてみましたが、本作品との関連はわかりませんでした。

鈴木 彊 序の55金から64金打と金2枚を使っての追い方には不安がありました。その後もきわどい攻め方で繋いで中盤3度の飛車合いなど見せ場があり、収束も見事でした。
永島勝利 序の豪快さに目を奪われるが、以後の手順にも工夫あり。意外性のある序だが、紛れがあまりないのが難。
今川健一 それにしても、よく手が続くと感心。さしたる巧手はないが、各処で変化読み、合駒選びで苦労。詰め上げて手数勘定、61手。短編を幾つも解いた、そんな気分が少しある。
竹中健一 変化は結構ホネがあるが、手順は意外にも趣向的で楽しめました!
加賀孝志 飛合いの変化を読みながら解く。総ての駒が生きている。力で押す作品だが楽しめました。
和田 登 俗手で迫る序奏は意外だった。

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