詰将棋入門(53) 箱庭型無仕掛

谷向奇龍 あさぎり 第68番 詰パラ 1956.1

作者曰く

今までの無仕掛図式は、玉将の逃げ道を塞ぐ玉方の駒が配置され、無仕掛とは名のみ、2,3手で簡単に手掛かりが出来,……中略……手掛かりのつきやすい飛車はなし、桂馬を打っても取られてしまう、と云う変な作品を作り上げました。

「あさぎり」解説より

裸玉はインパクトあるが、いままでに紹介した2作(伊藤看寿岡田秋葭)はいずれも初手に飛車を打てば、その駒が手掛かりとして残る。
本作はどこにどうやって手掛かりを得るかで悩む、いわば正統的無仕掛作品だ。(類作は稀少)

まずは端におびき寄せる。

82銀、同玉、94桂、同歩、93銀、

同玉は
75角、84銀、85桂、82玉、74桂、同歩、73金、同銀、同桂成、同玉、65桂、82玉、73銀、92玉、82金まで
このとき、銀合ではなく84歩と移動合すると、
85桂、83玉、73桂成、同玉、85桂、74玉、65金、同玉、66金、54玉、55金打まで
で43歩の配置の意味が分かる。

同香、92金、同玉、84桂、

9筋の守備駒をすべてうわずらせたので次は8筋に手をつける。

同歩、91金、同玉、83桂、

なんと13手目にしてやっと手掛かりが残った。
この後は最短でスマートに収束していく。

92玉、82金、同玉、74桂、同歩、91角、72玉、73金、61玉、71桂成、同玉、82角成、61玉、72馬まで27手詰

谷向奇龍には他にもインパクト抜群の作品がいくつもある。

次の図は無仕掛図式かつ角砂糖図式だ。

谷向奇龍 「穴熊」 風ぐるま 1954.7

手順も素晴らしいのだが残念ながら余詰があった。
その修正図が下図。

谷向奇龍 あさぎり 第69番 1973.9.25

しかし、調べてみたらこの図でも余詰は残っているようだ。
やっと手掛かりが残るのが15手目という名作なので是非完成図を残して欲しいと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.