谷向奇龍 あさぎり 第68番 詰パラ 1956.1
作者曰く
今までの無仕掛図式は、玉将の逃げ道を塞ぐ玉方の駒が配置され、無仕掛とは名のみ、2,3手で簡単に手掛かりが出来,……中略……手掛かりのつきやすい飛車はなし、桂馬を打っても取られてしまう、と云う変な作品を作り上げました。
「あさぎり」解説より
裸玉はインパクトあるが、いままでに紹介した2作(伊藤看寿、岡田秋葭)はいずれも初手に飛車を打てば、その駒が手掛かりとして残る。
本作はどこにどうやって手掛かりを得るかで悩む、いわば正統的無仕掛作品だ。(類作は稀少)
まずは端におびき寄せる。
82銀、同玉、94桂、同歩、93銀、
同玉は
75角、84銀、85桂、82玉、74桂、同歩、73金、同銀、同桂成、同玉、65桂、82玉、73銀、92玉、82金まで
このとき、銀合ではなく84歩と移動合すると、
85桂、83玉、73桂成、同玉、85桂、74玉、65金、同玉、66金、54玉、55金打まで
で43歩の配置の意味が分かる。
同香、92金、同玉、84桂、
9筋の守備駒をすべてうわずらせたので次は8筋に手をつける。
同歩、91金、同玉、83桂、
なんと13手目にしてやっと手掛かりが残った。
この後は最短でスマートに収束していく。
92玉、82金、同玉、74桂、同歩、91角、72玉、73金、61玉、71桂成、同玉、82角成、61玉、72馬まで27手詰
谷向奇龍には他にもインパクト抜群の作品がいくつもある。
次の図は無仕掛図式かつ角砂糖図式だ。
谷向奇龍 「穴熊」 風ぐるま 1954.7
手順も素晴らしいのだが残念ながら余詰があった。
その修正図が下図。
谷向奇龍 あさぎり 第69番 1973.9.25
しかし、調べてみたらこの図でも余詰は残っているようだ。
やっと手掛かりが残るのが15手目という名作なので是非完成図を残して欲しいと思う。