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詰将棋雑談(20) 桂馬のダイビング

詰将棋入門(60)で田辺国夫作を並べた。
当初は田辺作は好形から延々と盤上を追い回す作品を予定していたのだが、柿木で調べてみるとかなり大きな瑕疵があり断念。
それなら2作ある塚田賞受賞作もう一つの方を考えた。
これは大好きな作品だ。

田辺国夫 近代将棋 1956.7


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「五番槍」結果発表(3)

詰パラ1989年5月号デパートに発表された原図がこれです。

72銀不成、52玉、61銀不成、63玉、67香、同角不成、72銀不成、52玉、
56香、同角成、61銀不成、63玉、65香、同馬、72銀不成、52玉、
54香、同馬、96角、63歩、54龍、同飛、61角、51玉、
52歩、同飛、同角成、同玉、54飛、53角、63角成、43玉、
53馬、33玉、44馬、24玉、45馬、33玉、34飛、42玉、
43歩、同玉、21角、52玉、54飛、53桂、61銀不成、同玉、
72と、同玉、53飛成、45と、54角成、82玉、74桂、92玉、
81馬、同玉、83龍、71玉、82龍、61玉、62桂成 まで63手詰

解答者の評は難解な収束–61銀生から72とに集中していました。
解説者の申棋会(飯尾さん?)からは前半と後半のアンバランスが難であると評され、かつ初手より67香、52玉、62香成以下の余詰を指摘されています。

さて、再々掲になりますが、今回の改作図は下図です。

72銀不成、52玉、61銀不成、63玉、67香、同馬、72銀不成、52玉、
56香、同馬、61銀不成、63玉、66香、65香、同香、同馬、
72銀不成、52玉、54香、同馬、96角、同飛、54龍、53金、
61銀不成、42玉、34桂、32玉、14角、31玉、22桂成、同玉、
23歩成、21玉、22と、同玉、24龍、31玉、33香、42玉、
41角成、同玉、21龍、42玉、32龍、51玉、43桂、同金、
52龍 まで49手詰

後半をあっさり簡潔に仕上げた代わりに、素直な4香連打ではなく破調の合駒請求を取り入れた仕上げです。

筆者は凄く良くなったと感じましたが、一方でこの破調については賛否両論あるかなとも思いました。
66香はいわば余詰筋とも受けとることが可能だからです。
短編作家だったら、原図の前半の方を支持するのではないかと思うのです。

でも、一般の解答者はどう感じるか。
これは解答募集形式できいてみるしかないなとなった次第です。

さて、お待たせしました(特に大橋さんに)、解答を寄せてくださった方の全短評です。

有吉弘敏 大橋氏の作品に触れられるのは嬉しいです。
作者名による安心感とタイトルに助けられ短時間で解けました。
この機構から趣向的な動きを実現している事が、まず素晴らしい。
収束も最低限の配置から綺麗な纏め。
中筋 最初は手なりで13手目65香と指してしまいました。
39手目34香及び35香が成立しています。
34香は非限定で済むと思いますが、35香の場合作意手順同様に進めて45手目に31龍で余詰ではないでしょうか?(以下、43玉、34龍、42玉に32龍ではなく33龍が成立してしまうため迂回ではないと思います)
竹中健一 変調をきたす66香が一瞬見えなかったですが、そこを通り抜けてからは意外とスムーズに進みました。
最後の香だけ限定打じゃないのが惜しい感じがしました。
松澤成俊 ワンチャンスとらえて5本目の槍を確保しにいく構想ですか。
感心しました。
占魚亭 前半の銀不成~香打の趣向的手順が素晴らしいですね!
オリジナルを知らないのですが、どのような作品なんでしょうか。
ミーナ 銀ととはミニ知恵の輪か。見覚えある馬と角。この手筋は名前があるのだろうか。秋元手筋とか。
54馬と引かせて、96角以下収束のはずが、まったく詰まない。
66香、65香の応酬が趣向のなかにトリックを仕込む、大橋流の芸。でも、タイトルがヒントで助かりました。
収束はまるで作ったよう、といったら変か。すっきりした配置なのに、まとまってます。
ところで、39手目33香のところで、35香が成立しています。これに、作意通りなら問題ないのですが、
32竜のところで、31竜~34竜~33竜は桂が余るので、単なる迂回手順とはいえません。
持駒四香でも題名が五番槍だから、香合が出ることは当然予想される。銀の装置も滑らかなので、趣向自体はほぼ一目。
96角、同飛、54龍、53金合の局面からどう収束するのか、作者がどんな収束を付けたのか、そこに興味がある。
収束用の駒は2筋の桂と歩の二枚。その桂をポンと跳ねる34桂(27手目)がやりにくい。
以下はやや長めの収束。
2筋の駒はきれいに捌けて消えた。作者の苦心はそこにあったのかと思う。
三輪勝昭 大橋健司作懸賞問題の収束配置の24歩、26桂は収束の冗長感あるのが不満です。
冗長感を感じるのは長さより、馬を取り2筋に舞台が移るのが要因と思います。
96角を同飛と取ると54龍からどうしても舞台が右に行ってしまいます。
96同飛と取らず収束に移行する図を大橋さんにはもう少し考えてもらいたいと思います。
本間瑞生 香の打ち方を工夫する手順がおもしろかった。迂回が成立するところが少しあるのが若干惜しいと思った。

短評をくださった解答者は以上でした。
サンプル数が少ないのが残念ですが、66香の破調は好意的に受け止められているようです。

三輪さんからは改作案が届きましたが、割愛させていただきます。
筆者のような二流作家ならともかく、大橋さんが30年考えているのですから、当然お示しの図に現れた方針も比較検討した上での今回の改作図であることは間違いありません。

さて、最後に当選者の発表です。
辞退された方や既に献本した方を確率操作させていただいた上で、サイコロを振った結果、当選者は松澤さんと占魚亭さんに決定しました。
お二方は住所をお知らせください。

「五番槍」結果発表(2)

さて今夜はいよいよ作意の発表です。

有吉弘敏—作者名による安心感とタイトルに助けられ短時間で解けました。
ミーナ—タイトルがヒントで助かりました。

つまり,手なりで進めれば4香を気持ちよく打ち尽くしてしまう。
5枚目の香を入手せよというヒントですね。

72銀不成、52玉、61銀不成、63玉、67香、同馬、
72銀不成、52玉、56香、同馬、61銀不成、63玉、
66香、

なんとこの,角筋をとめる65香でなく、66香が成立していたのですね。

   65香、同香、同馬、72銀不成、52玉、
54香、同馬、96角、同飛、54龍、

昨夜と異なりこの局面で持駒に香が増えたのですから42玉は簡単に詰みになります。
53に合駒となりますが61銀生と追い出せます。

   53金、61銀不成、42玉、34桂、32玉、
14角、31玉、22桂成、同玉、23歩成、21玉、
22と、同玉、24龍、31玉、33香、42玉、
41角成、同玉、21龍、42玉、32龍、51玉、
43桂、同金、52龍まで49手詰

さて,早くも三輪さんからコメントがついていましたが,出題図になかった35歩が結果発表時には出現した理由は次の解答にあります。

中筋—39手目34香及び35香が成立しています。
34香は非限定で済むと思いますが、35香の場合作意手順同様に進めて45手目に31龍で余詰ではないでしょうか?
(以下、43玉、34龍、42玉に32龍ではなく33龍が成立してしまうため迂回ではないと思います)

ミーナ—39手目33香のところで、35香が成立しています。これに、作意通りなら問題ないのですが、32竜のところで、31竜~34竜~33竜は桂が余るので、単なる迂回手順とはいえません。

というわけで35香の余詰を回避するために35歩が配置されました。
これでも34香の非限定は残りますから,作者は満足していないかもしれません。

竹中健一—最後の香だけ限定打じゃないのが惜しい感じがしました。

さて,本作が既発表作の改作図と知って,当然次のような疑問が湧いてくると思います。

占魚亭—オリジナルを知らないのですが、どのような作品なんでしょうか。

というわけで,次回,最終回はそのオリジナルの図と,解答者の全短評ということになります。
歳取ると根気が続かず細切れになってしまって申し訳ないです。
(つづく)

「五番槍」結果発表(1)

お待たせしました。

懸賞出題「五番槍」大橋健司の解答発表を始めます。
まず随分と遅くなってしまったことをお詫びします。
理由はいろいろあるのですが,そしてまだ全然解決していないのですが,
とりあえず「始める」ことにしました。

さて,今夜は紛れ筋から。

72銀不成、52玉、61銀不成、63玉、67香で次図

この攻方角と玉方馬の形は習いある形で67香は第一感である。

同馬、72銀不成、52玉、56香、で次図。
銀で玉を移動させながら香の限定打を繰り返す狙いとみえる。

同馬、61銀不成、63玉、65香、

同香、同馬、72銀不成、52玉、54香、

同馬、96角、

もう角を捨てるしか手がない。

同飛、54龍、42玉

合駒もありますが,すっと42玉で困っています。

手としては34桂でしょうが31玉は13角,33玉は51角で簡単に詰むのに,32玉で以下
14角,21玉,22桂成,同玉,23歩成,11玉…

手はまだ続きますが,届きません。

と,筆者はここまではすぐたどり着くも,ここで困っていたのですが,
解答者の評を読むと,「タイトルがヒントですぐわかった」という感想が多かったです。
言われてみれば…。
(つづく)

懸賞出題「五番槍」大橋健司

何年ぶりになるでしょうか。
突然ですが、懸賞出題をいたします。
例によって大橋健司氏の旧作の改作図です。
しかし、原図とは見た目も中身もかなり違いますので楽しんでもらえるものと思います。

  • 解答を募集します。短評・長評よろしくお願いします。
  • 解答はメールで


    まで

  • 締切は1ヶ月後の6月6日(木)
  • 解答者7名について賞品1冊進呈します。新刊「Limit7」

当選確率0.142857は大盤振る舞い!よろしくお願いします。

「迷宮の鱗舞」解答発表(追記)

飛合の変化

大橋さんからコメントがありましたように変化の処理が一部変わっていたことをうっかりしました。

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60手目74飛合の変化局面です。
最初の図では(もうありませんが)76成香でした。
これが改良図では成桂に変わっていたのは、この変化を膨らませる意味があったのです。

74飛合の場合、73角成だと94玉に76馬、同飛、86桂、同飛で不詰。

そこで、74の飛を質に見立てて75桂と捨てます。

同成桂には飛車を取って早いので、72玉。

73角成と捨駒風味で追い、61玉に43馬、52銀、62歩、51玉で次図。

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後は63桂生以下32と迄簡単だ。

もし玉の持駒に飛車があると銀合でなく52飛合とされて、32とを同飛ととられ不詰。

これが99飛が余詰・不詰防止に効いていると書いた不詰防止の中身だ。
(ついでに余詰防止は桂馬1枚でも75桂と攻める筋でしょう)

1通だけ届いた解答

枯れ木も山のにぎわいってことで・・・
斜め追いは大好きですが大橋さんらしさはあまりみられないような気が・・・(笑)
松沢成俊

解答が届かないとあきらめて、解答発表を書き始めたその日に届いていました。
見逃していて御免なさい。

いつもありがとうございます。松沢さん。

斜め追いは私も作ったことがありますが、この作品の造りは大橋さんらしいなと感じました。

おそらく松沢さんのいう「大橋さんらしさ」は本作のような一本道の流れの中に現れる謎解きではなく、狭い場所の中で自然な深い紛れの中から本筋を探していくというタイプの作品でしょうか。

まさにそのタイプの作品を、先日のたま研の課題作に大橋さんが出題していました。
おそらくパラに発表されると思いますので、乞う御期待です。

「迷宮の鱗舞スケルツォ」解答発表(後編)

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さて、73馬では打歩詰。
それでは別の手段に思い至っただろうか。

 

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65馬。

馬を筋違いにしてしまうので、なんともやりにくい手だ。

94玉には76馬と桂馬の質を見ている。

74合駒には73角成で同じ事なので72玉と逃げ出すしかない。

73角成、61玉とおって次図。

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71銀成、から63桂と打替える。

61玉ならば51桂成から72歩と橋に追い詰めて簡単。

この銀は初手に打った銀。

最後の最後でこんなに洒落た消え方をするなんて。

さて、局面は残り3手に見える。

そう馬を切って頭金。

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91馬、72玉。

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すらっと逃げられる。

でも心配無用。

83馬という気持ち良い飛び込みが見えている。

そうか、最後に2枚馬に見得を切らせて収束か。

さすがだね。

ところが83馬も同玉とはしてくれず63馬。

なんとまだ1幕あったのだ。

ここからが本当のクライマックスだったのだ。

そして最終5手前。

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これは解説不要だったはずだ。

最後までリズムに乗って一気に駆け下った。

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詰上がり図をみると99飛以外の駒が実によく働いていたものと感心せざるを得ない。

(99飛ももちろん余詰・不詰を防ぐ配置なのだが)

この作品、最後の駆け下り趣向から作り始めたのは間違いなかろう。

とすると、この趣向に必要な配置を極限まで働かせ切った中盤そして序盤であることが分かる。

特に詰上がり図の39銀と19金の生まれ育ちに思いをはせて頂きたい。

最後に一気に作意手順を鑑賞されたい。

「迷宮の鱗舞スケルツォ」解答発表(中編)

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続きです。

これで2枚馬が連結して玉を追う準備が完成。

もちろん、64馬といく。

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25歩が浮いている。
そしていかにもな飛車と銀の配置。

34銀、同玉、24飛、35玉
は自然な指し手。

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これで45馬といける。

 

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次の指し手も自然な手だ。

37歩からと金と交換して次図。

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57銀があるので46馬とできない。

この銀を動かすのに桂馬が必要。

そこで47金、同玉、37馬、65銀と

桂馬を入手。

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同玉だと。

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55馬、74玉、44飛ともう1枚桂馬を入手。

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64馬から75桂として、75の地点を埋める。

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同成桂に95桂ともう1枚使えば94玉、84銀成で次図。

あとは簡単だ。

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したがって、65銀には45玉とかわすのが正解。

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44桂と57銀がよく守っていて容易でない。

55馬とすると、

36玉、に48桂と57銀の移動を図るも

同銀生で以下続かない。

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打開する妙手が56銀だ。

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同桂は飛車の横効きが通るので46歩~47桂~64銀成以下。

同玉にさらに48桂と打つ。

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やはり同銀生だが、46馬から追い込めるのが先程と違う所。

次の手は簡単だ。

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28金から成桂と交換してさらに39桂。

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応手は当然ながら生だ。

成ならば46馬から28馬までひっぱって簡単。

これで馬の動きを邪魔する駒はなくなった。

再び上段に押す戻すのだろう。

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37馬~46馬~55馬と押していき、

44飛と桂馬の補充。

収束は間近か。

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64馬83玉で次図。

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先の変化と違い桂馬は1枚しか持っていないので、

75桂と贅沢はできない。

93歩成から82銀生と攻める。

対して83玉とふんばるのが、73馬なら94玉で打歩で逃れようとする所謂「顔面受け」。

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さて73馬が駄目ならば次の手段は?

もう味の濃い所は終わり後は……。

さて、ここからはもう一息!

「迷宮の鱗舞スケルツォ」解答発表(前編)

お待たせしました。

大晦日に紹介した大橋健司さんの大作「迷宮の鱗舞スケルツォ」ですが、いくら待っても解答が届きません(T_T)
やはり賞品ださないとだめだったか~。

それともパラが2日には届いて、しかも新年号だというのに大学院などいきなり若島正だものなぁ。
そちらでお腹いっぱいになってしまったでしょうか。

はたまた、本作が難しかったか…。

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右辺には銀とがいるものの飛車も守っており、心許ない初形。
香を打ったりしては全然駒がたりない。

初手は頭から銀で押さえる一手に見えるのだが…。

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81玉と逃げられるともう困ってしまう。
91金が守っているではないか。

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83香と攻めてみても
71玉、82香成、同金、同銀成で次図

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全然、足りない。

しかし、実は2手目81玉には妙手が用意されている。

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82銀成。

同金、同角成
と19角を捌いてしまう。

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さらに93歩成。

もう方針はおわかりだろう。
そう、86馬を主軸に詰ましてしまうのだ。

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同玉に84銀、同玉、
と銀も捌いて85香とすれば、あとは53に作れると金で押していける。

したがって初手83銀に2手目の正しい応手は

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71玉なのだ。
72歩、61玉に香だけで上部におびき出すことができるのか。

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64香が限定打。

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51玉とあくまで下辺にへばりつけば、
62銀生として頭に歩を叩いて53歩成だ。
したがって

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64香には52玉と上がらざるを得ない。

rinbu11

これで
63香成、同玉、74銀
と2枚馬の勢力圏に引きずり出すことに成功した。

rinbu12

この銀は取れない。
さてこれで序盤は抜け出した。
ここから楽しいメインディッシュが始まる。

未見の方は是非、後編のアップの前に挑戦を。