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つみき書店の店長です。

「Limit7」制作備忘録(2)

まず、下の写真を見ていただきたい。

「こんな駒の持ち方はできない」とおっしゃる向きもいるようだが、論より証拠オイラの駒の持ち方はこうなのである。
特に初めての道場で指すときに、相手に「なんだこの駒の持ち方は、まるっきりの素人だな」と油断させるときに有効である。

ともあれ、「Limit7」の表紙はいままでの詰将棋作品集とは違う印象にしたかった。
何かの間違いで、本屋に平積みにされたとき、女性がうっかり手に取ってしまうような表紙。
そこで将棋についてはまったく何も知らない女性のデザイナーにお願いした。
だから、見てすぐに気づいたが直しは要求しなかった。

さて今日は棋譜の話。

棋譜は最終段階近くまで、このような形だった。

完成品ではこのようにした。

上のソースは下記のようにただ一塊のテキストを流しただけ。

\作意{ 85飛, 46玉, 45角成, 47玉, 87飛, 57歩, 同飛, 同玉, 87飛成, 58玉, 36馬, 59玉, 57龍, 49玉, 58馬, 38玉, 48馬, 28玉, 37龍, 18玉, 19歩, 同玉, 17龍, 18金, 37馬, 29玉, 18龍, 同玉, 28金, 19玉, 27金, 29玉, 28馬まで33手詰}

完成品では下記のように、一つ一つの差し手を\mbox{}で包んで、途中で改行をしないようにした。

\作意{ \mbox{85飛}, \mbox{46玉}, \mbox{45角成}, \mbox{47玉}, \mbox{87飛}, \mbox{57歩}, \mbox{同飛}, \mbox{同玉}, \mbox{87飛成}, \mbox{58玉}, \mbox{36馬}, \mbox{59玉}, \mbox{57龍}, \mbox{49玉}, \mbox{58馬}, \mbox{38玉}, \mbox{48馬}, \mbox{28玉}, \mbox{37龍}, \mbox{18玉}, \mbox{19歩}, \mbox{同玉}, \mbox{17龍}, \mbox{18金}, \mbox{37馬}, \mbox{29玉}, \mbox{18龍}, \mbox{同玉}, \mbox{28金}, \mbox{19玉}, \mbox{27金}, \mbox{29玉}, \mbox{28馬}まで33手詰}

後から手作業で包んでいくのは大変な作業だった。sedを使えって?不思議なもので、この例ではすべて包んでいるけれど、場合によっては包まない方が短い行数に収まってくれたりもするのです。そこで、少しずつ確認しながら進めていった。結局、この例のように全部包むという結果になることも多かった。

それだったらなんで最初にki2ファイルから作意を抽出する際にしなかったかというと、400カ所でどのように隙間を空けるかの試行錯誤が始まり、コンパイルに時間がかかることが予想されたからだ。
実際、それまで一瞬だったコンパイルがイライラするほど時間がかかるようになった。
そして、うまく調整ができず、指し手の途中での改行を禁止することによって棋譜の行数が増えたら……(1)で書いたように、その影響はその章の終わりまで及んでしまう。

なんで棋譜を詰め込んでしまうのか、それは「この詰」のように1行4手に統一すると右側に隙間ができてなんとなくさみしいということと、(1)にも書いたが、行数が増えるとページ数が増えて、定価が高くなるからだ。

そこでメモしておこう。

  • ki2から作意を抽出する際には、裸のままと\mbox{}で包んだものと、両方出力しておく。
    そして、編集作業のどこかのタイミングで切り替えて使う。
  • または読みやすさのことも考えて、1行4手に統一する。

「Limit7」制作備忘録(1)

主に自分のために、「Limit7」制作のメモを残しておこうと思う。

その前に、正誤表を更新したことをお伝えしなければならない。
指摘してくださった皆さんに感謝したい。

あれだけ校正を繰り返して修正を重ねてきたのに、こんなにミスが残っていたとは痛恨である。
反省すると、解説文の棋譜の読みが甘かったと言うことだ。

詰将棋の本は図面が大きな位置を占める。
ところが図面の途中で改ページはできないため、そのまま版を組むと隙間だらけの間延びした書面になってしまう。
それはかまわないという行き方もあるが、その結果ページ数が増えると印刷・製本料金が高くなり、つまりは定価が高くなる。

そういう事態を避ける方法が1作あたりのスペースを固定し、解説文をそのスペースに合わせるという方法だ。
しかし「Limit7」はその性質上、この方法はとれない。解説の必要もない初心向きの作品から、合駒連発の難解作までバラエティに富んだ選題だからだ。
解説者が書きたいだけ、自由に解説は書いてもらうという方針だ。
もっとも編集作業中は「解説が1行短く収まってくれたら」と思うことしきりだった。逆に「このページすかすかだから、もうちょっと詳しく書いてくれないかな」と思うことも。

今回は次のような対応をした。

通常は番号・作者名→図面→作意→解説という順序だが、場合によっては番号・作者名→作意→図面→解説という順序も使うことにした。
ただし、その変更は奇数ページの右段では行わないことにした。図面を見るためにページをめくらなければならないからだ。

あとは各ブロック間の空白の微調整だ。

さて、この作業で1カ所を修正するとそこから章の終わりまで影響が及ぶ。
途中で、作品の差し替えがあったり、駒数の数え間違えから作品配列の変更も最終段階であったのだが、その度に1章まるごと調整のやり直しである。
(索引ページ等も作り直しである……)

文字の方に意識を集中させると番号・作者名→作意→図面→解説の必要がなくなったのにそのままの順で戻し忘れた部分が見えなくなる。
その結果、逆に解説部分は意識から薄れていってしまったんだと思う。
文章のバグを完全に取り去ってから組版作業に進むというのが理想だが、それは現実的に可能なのだろうか。

今回はこの図面と作意の位置交換はすべて手作業で行った。
ブロック間の空白の調整も1mm単位で動かしながら毎回コンパイルして確認しながらの作業だった。
これは大変なので、次回は位置交換も組み込んだ設計にする必要がある。

例えば
\作品{001.ki2}{}{} と書けば、図面→作意で空白も標準。
\作品{001.ki2}{R}{T} と書いたら、作意→図面になり、空白はタイト。

杉の宿合宿2019参加者募集

年に一度、指将棋を指す日です。

日時 8月24日(土) 昼頃~25日(日) 昼頃

場所 湯河原温泉 杉の宿 現地集合・現地解散

費用 実費(宿泊料+こっそり持ち込む酒とつまみ代) 昨年実績はこちら

内容 将棋を指すこととついたて将棋がデフォルトでしたが、考えてみるとここ数年はついたてやっていないですね。角さんがブロックスだったかを持ってきたりします。

オイラはバックギャモンを今年も持って行こうかな。

歴史 もともと職場の将棋仲間の合宿でした。そのなかにオイラと佐藤和義さんがいて、そこに小林さんが加わってだんだん詰将棋濃度が濃くなってきました。
これまでに参加してくれた詰将棋メンバーは角さん、柳原さん、馬屋原さん、近藤さん、金子さん……。
ただし、今年は小林さんは世界大会、柳原さんは仕事、馬屋原さんと太刀岡さんは社団戦で不参加なので、久しぶりに指将棋濃度の高い集まりになりそうです。

参加希望者は風みどりまで連絡ください。
下のコメント欄でもOKです。

全国大会2019@大阪産業創造館

前日のあいも文化交流館での蛸研を含めて2日間だったので、満足感が高いです。

とにかくホテルに帰っても詰将棋のことだけを考えていて良いというのはなんと贅沢な時間であることか。

神戸のチェスプロブレム世界大会を思い出しました。

蛸研の準備をしてくださった近藤さん・柳原さんに感謝です。

そして円熟の大会運営ありがとうございました。創棋会の皆さん、特に事前から色々とご配慮くださった吉松さんに感謝です。

書くネタは山ほどあるのですが、今夜はもう眠いのでとりあえず感謝とお詫びだけにしておきます。

太郎さん、「TAROTRAILS」ありがとうございました。往路の新幹線の中で「この詰2019」の上谷論文を読んでいた影響で、帰宅して最初に開いたのは「TAROTRAILS」でした。

久保さん、「青い鳥」ありがとうございました。「Limit 7」は購入していただいたのに申し訳ない気持ちでいっぱいです。来年か再来年、つみき書店から新刊出たら差し上げます。(忘れなければ)

そうだ、「Limit 7」を購入してくださった皆さん、ありがとうございました。

大会参加者は概ね献本さしあげた方が多数だろうし、ほとんど売れないだろうなと思いつつ、いやマニアだったら自分用・保存用・布教用の3冊は買うだろうし、会場で献本する可能性もあるのでその分も持って行かねばならない。もし売れ残ったら、「3冊購入者には飯尾さんとの握手券、5冊購入者には小池さんとのチェキ券」とすれば捌けるだろう…とは思いませんでしたが、結局40数冊持って行きました。

これが重い。

宅急便で送るために前日からホテルを確保したのですが、平日は仕事で忙しく、送る時間がなくて結局手荷物で持って行く羽目に陥りました。重かった。

帰りはかなり軽くなったので、心から感謝です。

上田さんには、つみき書店が営業掛けたらきっと注文来るよという方を教えていただきました。

「あそこに座っている人なら100万でも200万でもだすよ」

おぉ、角さんが断ったという噂のあの人ですね。そういう案件こそつみき書店が請け負わなければ……と思ったのですが、その方の周りには大勢の方がいて談笑中。それでは飲み物でもとってきて、しばらく後で営業掛けよう。

で、飲んだり食べたり話したり詰将棋出題してもらったりしているうちに、気づいたらその方は帰られてしまったようです。

ごめんなさい。来年4月になったら連絡とります。

図書館の思い出

石川さんのエントリーに次のような文章があった。

これまで自費出版の詰棋書を県立や市立の図書館に寄付した経験がある。お礼の文書を添えて丁重なお礼を口頭でも受けるのだが、その後、一般の人が閲覧できる書棚に当該本が並んだことはない。
via.公的機関への詰棋書の寄付は有難迷惑(ストンリバーの日記)

私には図書館に本を寄付するという発想はなかった。
営業を掛けようかという気持ちはあるが、日販とか東販経由でないと駄目かなぁ。
地方中小出版物流通センターなどは図書館には入らないのだろうか。

それにしても寄付を受け取っておいて、書架に出さないとは失礼な話。
選挙が近づいた頃合いに、市長にでも直訴してみてはどうでしょう。

さて、タイトルの図書館の思い出だが、東京都江東区の城東図書館。
そこに黒川一郎の「将棋浪漫集」が寄贈されていた。
黒川さんは当時亀戸あたりにいらしたはずだから、江東区の図書館に寄贈したのかもしれない。
これには驚いた。

同じ江東区の深川図書館の階段の踊り場にあった東洋文庫の書架から「詰むや詰ざるや」を見つけたのと、どっちが先立ったか記憶は既に曖昧だが、とにかくこの2冊には「こんな詰将棋の世界があるのか」という衝撃を受けた。

年寄りの回顧談はともかく、あの浪漫集は寄贈本だったのは記憶にあるから、書架に並べないのは図書館員の裁量なのではないかなと言うことです。

それは「詰将棋図書館」構想ですね

詰将棋版国会図書館法の提案磯田さんのコメントがついた。

オイラはそこまで大きなことは考えておらず、単に「新しい本作ったら、磯田さんに1冊贈呈しましょう」という呼びかけのつもりだったんです。

私は現行の全日本詰将棋連盟詰棋書保存委員会へ1冊寄付すれば十分だろうと思う。私は若い頃より1冊作るたびに磯田氏に送付を欠かしたことはない。
via.公的機関への詰棋書の寄付は有難迷惑(ストンリバーの日記)

石川さんはとっくの昔に実行していたんですね。さすがです。

と角さんも賛成してくれました。

磯田さんの所で「一覧」を更新した後は、保管場所がなくて邪魔だったら、若い人にあげたり古本屋に売ったり処分してもらってかまわないんです。

さて、それはさておき、コメントしてくださった「詰将棋図書館」構想は壮大で素晴らしいですね。

新しく参入する方がいずれぶつかる問題が「過去作を知らない」ということ。
それを解決する方策が全詰連の詰将棋データベースだと思っていましたが、どうも解決策とはいえないようです。

その理由は二つ。

  • 一つは無料で公開されていない。オイラはかなり前にも書きましたが、データの入力やCDに焼いたり発送したりの費用が償却されたら、順にネットで無料公開されるものと思っていました。しかし、一向にその気配はないようです。看寿賞の賞金の原資として確保されているのか?看寿賞に賞金をつけるより詰将棋データベースを無料公開する方が詰将棋界の発展によほど寄与すると思うのですが、まぁ理由は想像なのでよくわかりません。
  • もう一つは、詰将棋データベースでは過去作を鑑賞するのは難しい。これは今回「Limit7」の編集をして身に沁みたのですが、図面と作意だけを並べても、なかなかその作品を理解するのは難しいということです。ましてや数が多いと大変です。やはり作者の言葉や解説・解答者の声がついていて、作品鑑賞の大きな手がかりとなります。

やはりパラ本誌や単行本で読まないとわからない。
しかし、身近に詰将棋の会合があってベテランに本を貸してもらえるとか、そのような環境は全国的には貴重なもの。
そこで、考えたのが「貸本屋」でした。

オイラの蔵書を例えば500円で2週間貸し出す。往復は郵送。

この話をどこでしたのかオイラは記憶がないのだけれど、協力したいと大橋さんから詰棋書が送られてきた。

さらに、将来「詰将棋図書館」を実現する現実的な方法を考えてみると……やはり自炊でしょうか。

絶版になった本は著者の了解を得て自炊してクラウドにあげる。
これなら費用も最低限で、誰でもいつでもアクセスできる財産になる。

どなたか法律に詳しい方、検討してみてくれないでしょうか。

まずは隗よりはじめよで、「詰将棋の詩」を公開してみましょうか。(誰に了解とればいい?)

つみき書店でやりたいこと

いよいよ来週は全国大会。
本日、新幹線の切符も購入。あとは「Limit7」を宿に発送することと、大会で配るフライヤーを作ること。
このフライヤーの構想を練っているのだが、なかなか纏まらない。
そこで、その下書きとして、思いつくままにここに書いてみる。

以前から言っていたことは

大衆路線の詰棋書出版を目指す

ということ。
角ブックスの高級路線。(それが角さんの狙いだとは言っていませんので念の為)
PARADISE BOOKS の学術路線。
これらと競合しないのが大衆路線だ。

角ブックスのラインナップに載れば、それは一流作家の証だ。
自分にはとても無理だろうと尻込みしてしまう作家も多いのではないか。
編集も美しい職人の仕上げ。作品の変化にまで角さんの目は行き届いている。

その対極の編集方針の見本が「Limit 7」だ。
組版にInDesignも使っていない。(持っていないから)
作品の配列順を指示するソースファイルと各図面の作意も入力されたkifファイル。およびそれぞれの解説のテキストファイルから自動で組版する仕組みだ。
ソフトはLaTeXで印刷所にはpdfで入稿した。

もちろん自動組版だけでは、隙間だらけの散漫なページが続出し、結果長大なページ数になってしまうので単価が高くなる。
したがって最後はコツコツと手作業で1mm単位で隙間を調節した。(本当は上下の余白をもっととりたかったのだが予算の関係で断念。)
それでも、編集の手間は圧倒的にかからない。
出来上がりは「ただ並べただけ」という印象を持たれてしまうのは仕方ない。
この方法なら安く作れますよという見本が「Limit7」なのだ。(2000円は高いって? 販売価格ではなく編集コストの話です。)

ここ数年で、数作の「遺作集」が編まれた。
それはそれでうれしいけれど、作者の声がもっと読める「作品集」はもっとうれしいのだ。

つみき書店は、そのような詰将棋作品集の編集・出版アシスタントとして役立っていきたい。

  • つみき書店が企画する詰棋書の出版
  • つみき書店が編集・出版のお手伝い
  • つみき書店が組版だけのお手伝い
  • つみき書店が合同作品集のマッチングのお手伝い

いろいろな場合が考えられるが、柔軟に対応したい。

次に考えていたのは

石沢さんのような仕事がしたい

ということだ。

詰将棋の世界に入った頃、石沢さんの青焼き本には本当にお世話になった。
現代でこの仕事をするには…
手っ取り早いのは古い詰将棋の本を自炊してpdfを売ったり、無料で配布したりというのが考えられるが、さすがに作品だけでなく解説の文章や編集著作権までひっくるめてパクるというのはアウトだろう。

そこで考えたのは

  • 詰棋書の古本屋
  • 詰棋書の貸本屋

古本屋は売れるものがあまりないので開店休業状態になるのは目に見えているが、貸本屋は実現可能性がありそうだ。

調べたら古本屋は警察の生活安全課に届ければ開店できるようだが、貸本屋はまだわからない。

まぁ、来年の3月に今の仕事を定年退職したらこういったことをして遊ぼうと考えているわけです。

「五番槍」結果発表(3)

詰パラ1989年5月号デパートに発表された原図がこれです。

72銀不成、52玉、61銀不成、63玉、67香、同角不成、72銀不成、52玉、
56香、同角成、61銀不成、63玉、65香、同馬、72銀不成、52玉、
54香、同馬、96角、63歩、54龍、同飛、61角、51玉、
52歩、同飛、同角成、同玉、54飛、53角、63角成、43玉、
53馬、33玉、44馬、24玉、45馬、33玉、34飛、42玉、
43歩、同玉、21角、52玉、54飛、53桂、61銀不成、同玉、
72と、同玉、53飛成、45と、54角成、82玉、74桂、92玉、
81馬、同玉、83龍、71玉、82龍、61玉、62桂成 まで63手詰

解答者の評は難解な収束–61銀生から72とに集中していました。
解説者の申棋会(飯尾さん?)からは前半と後半のアンバランスが難であると評され、かつ初手より67香、52玉、62香成以下の余詰を指摘されています。

さて、再々掲になりますが、今回の改作図は下図です。

72銀不成、52玉、61銀不成、63玉、67香、同馬、72銀不成、52玉、
56香、同馬、61銀不成、63玉、66香、65香、同香、同馬、
72銀不成、52玉、54香、同馬、96角、同飛、54龍、53金、
61銀不成、42玉、34桂、32玉、14角、31玉、22桂成、同玉、
23歩成、21玉、22と、同玉、24龍、31玉、33香、42玉、
41角成、同玉、21龍、42玉、32龍、51玉、43桂、同金、
52龍 まで49手詰

後半をあっさり簡潔に仕上げた代わりに、素直な4香連打ではなく破調の合駒請求を取り入れた仕上げです。

筆者は凄く良くなったと感じましたが、一方でこの破調については賛否両論あるかなとも思いました。
66香はいわば余詰筋とも受けとることが可能だからです。
短編作家だったら、原図の前半の方を支持するのではないかと思うのです。

でも、一般の解答者はどう感じるか。
これは解答募集形式できいてみるしかないなとなった次第です。

さて、お待たせしました(特に大橋さんに)、解答を寄せてくださった方の全短評です。

有吉弘敏 大橋氏の作品に触れられるのは嬉しいです。
作者名による安心感とタイトルに助けられ短時間で解けました。
この機構から趣向的な動きを実現している事が、まず素晴らしい。
収束も最低限の配置から綺麗な纏め。
中筋 最初は手なりで13手目65香と指してしまいました。
39手目34香及び35香が成立しています。
34香は非限定で済むと思いますが、35香の場合作意手順同様に進めて45手目に31龍で余詰ではないでしょうか?(以下、43玉、34龍、42玉に32龍ではなく33龍が成立してしまうため迂回ではないと思います)
竹中健一 変調をきたす66香が一瞬見えなかったですが、そこを通り抜けてからは意外とスムーズに進みました。
最後の香だけ限定打じゃないのが惜しい感じがしました。
松澤成俊 ワンチャンスとらえて5本目の槍を確保しにいく構想ですか。
感心しました。
占魚亭 前半の銀不成~香打の趣向的手順が素晴らしいですね!
オリジナルを知らないのですが、どのような作品なんでしょうか。
ミーナ 銀ととはミニ知恵の輪か。見覚えある馬と角。この手筋は名前があるのだろうか。秋元手筋とか。
54馬と引かせて、96角以下収束のはずが、まったく詰まない。
66香、65香の応酬が趣向のなかにトリックを仕込む、大橋流の芸。でも、タイトルがヒントで助かりました。
収束はまるで作ったよう、といったら変か。すっきりした配置なのに、まとまってます。
ところで、39手目33香のところで、35香が成立しています。これに、作意通りなら問題ないのですが、
32竜のところで、31竜~34竜~33竜は桂が余るので、単なる迂回手順とはいえません。
持駒四香でも題名が五番槍だから、香合が出ることは当然予想される。銀の装置も滑らかなので、趣向自体はほぼ一目。
96角、同飛、54龍、53金合の局面からどう収束するのか、作者がどんな収束を付けたのか、そこに興味がある。
収束用の駒は2筋の桂と歩の二枚。その桂をポンと跳ねる34桂(27手目)がやりにくい。
以下はやや長めの収束。
2筋の駒はきれいに捌けて消えた。作者の苦心はそこにあったのかと思う。
三輪勝昭 大橋健司作懸賞問題の収束配置の24歩、26桂は収束の冗長感あるのが不満です。
冗長感を感じるのは長さより、馬を取り2筋に舞台が移るのが要因と思います。
96角を同飛と取ると54龍からどうしても舞台が右に行ってしまいます。
96同飛と取らず収束に移行する図を大橋さんにはもう少し考えてもらいたいと思います。
本間瑞生 香の打ち方を工夫する手順がおもしろかった。迂回が成立するところが少しあるのが若干惜しいと思った。

短評をくださった解答者は以上でした。
サンプル数が少ないのが残念ですが、66香の破調は好意的に受け止められているようです。

三輪さんからは改作案が届きましたが、割愛させていただきます。
筆者のような二流作家ならともかく、大橋さんが30年考えているのですから、当然お示しの図に現れた方針も比較検討した上での今回の改作図であることは間違いありません。

さて、最後に当選者の発表です。
辞退された方や既に献本した方を確率操作させていただいた上で、サイコロを振った結果、当選者は松澤さんと占魚亭さんに決定しました。
お二方は住所をお知らせください。

「五番槍」結果発表(2)

さて今夜はいよいよ作意の発表です。

有吉弘敏—作者名による安心感とタイトルに助けられ短時間で解けました。
ミーナ—タイトルがヒントで助かりました。

つまり,手なりで進めれば4香を気持ちよく打ち尽くしてしまう。
5枚目の香を入手せよというヒントですね。

72銀不成、52玉、61銀不成、63玉、67香、同馬、
72銀不成、52玉、56香、同馬、61銀不成、63玉、
66香、

なんとこの,角筋をとめる65香でなく、66香が成立していたのですね。

   65香、同香、同馬、72銀不成、52玉、
54香、同馬、96角、同飛、54龍、

昨夜と異なりこの局面で持駒に香が増えたのですから42玉は簡単に詰みになります。
53に合駒となりますが61銀生と追い出せます。

   53金、61銀不成、42玉、34桂、32玉、
14角、31玉、22桂成、同玉、23歩成、21玉、
22と、同玉、24龍、31玉、33香、42玉、
41角成、同玉、21龍、42玉、32龍、51玉、
43桂、同金、52龍まで49手詰

さて,早くも三輪さんからコメントがついていましたが,出題図になかった35歩が結果発表時には出現した理由は次の解答にあります。

中筋—39手目34香及び35香が成立しています。
34香は非限定で済むと思いますが、35香の場合作意手順同様に進めて45手目に31龍で余詰ではないでしょうか?
(以下、43玉、34龍、42玉に32龍ではなく33龍が成立してしまうため迂回ではないと思います)

ミーナ—39手目33香のところで、35香が成立しています。これに、作意通りなら問題ないのですが、32竜のところで、31竜~34竜~33竜は桂が余るので、単なる迂回手順とはいえません。

というわけで35香の余詰を回避するために35歩が配置されました。
これでも34香の非限定は残りますから,作者は満足していないかもしれません。

竹中健一—最後の香だけ限定打じゃないのが惜しい感じがしました。

さて,本作が既発表作の改作図と知って,当然次のような疑問が湧いてくると思います。

占魚亭—オリジナルを知らないのですが、どのような作品なんでしょうか。

というわけで,次回,最終回はそのオリジナルの図と,解答者の全短評ということになります。
歳取ると根気が続かず細切れになってしまって申し訳ないです。
(つづく)

「五番槍」結果発表(1)

お待たせしました。

懸賞出題「五番槍」大橋健司の解答発表を始めます。
まず随分と遅くなってしまったことをお詫びします。
理由はいろいろあるのですが,そしてまだ全然解決していないのですが,
とりあえず「始める」ことにしました。

さて,今夜は紛れ筋から。

72銀不成、52玉、61銀不成、63玉、67香で次図

この攻方角と玉方馬の形は習いある形で67香は第一感である。

同馬、72銀不成、52玉、56香、で次図。
銀で玉を移動させながら香の限定打を繰り返す狙いとみえる。

同馬、61銀不成、63玉、65香、

同香、同馬、72銀不成、52玉、54香、

同馬、96角、

もう角を捨てるしか手がない。

同飛、54龍、42玉

合駒もありますが,すっと42玉で困っています。

手としては34桂でしょうが31玉は13角,33玉は51角で簡単に詰むのに,32玉で以下
14角,21玉,22桂成,同玉,23歩成,11玉…

手はまだ続きますが,届きません。

と,筆者はここまではすぐたどり着くも,ここで困っていたのですが,
解答者の評を読むと,「タイトルがヒントですぐわかった」という感想が多かったです。
言われてみれば…。
(つづく)